健康経営、ダイバーシティー推進、働き方改革などを推進していく世の中において、女性特有の健康問題は、個人だけでなく企業、および社会で取り組むべき重要なテーマとなっています。トピックへの注目度が高まるにつれ、女性がより健やかに、より自分らしい人生を送るためのさまざまな取り組みも増えてきました。女性疾患に関する幅広い検査薬を取り扱っているロシュでは、長きにわたりウィメンズヘルスに注力してきましたが、この数年で、疾患啓発に留まらない新しい取り組みを展開しています。ロシュでウィメンズヘルスの活動に参画している知念さんに、活動の経緯や取り組み、そしてAMH検査について聞きました。
――ウィメンズヘルスに対して、ロシュの日本法人ではどのような活動をしていますか?
検査薬・機器メーカーとして、まずは、より多くの病院・施設にロシュの検査薬を取り扱っていただき、より多くの女性が検査を受けられる体制を構築していくことは常に行っています。さらに、女性に自分の身体のことを知っていただくためのさまざまな疾患啓発活動を行ったり、最近では女性の心身的課題と社会的課題の両方から女性活躍をデザインするプロジェクトにも参画したりしています。例えば、一般女性や企業に向けて、イベントやSNSでさまざまな情報発信に取り組んでいます。医療従事者とインフルエンサーの対談イベントでは、これまでに「やさしい妊活」「女性の不調」「性教育」などのテーマを扱いました。
また、婦人科は怖くて行きづらいと感じる方々のために、実際のクリニックにカメラを入れてどんなことをする場所なのかをレポートし、「怖くないよ」と伝えるコンテンツも好評でした。企業とコラボしてそうしたセミナーを福利厚生として提供したり、自治体とコラボして検査の助成を行ったり、といった活動もしています。これらの活動は、社外に向けて発信するだけでなく、社内にも積極的に発信しています。
――そうした取り組みは、どんな経緯で始まったのですか?
元来ロシュは、ウィメンズヘルスを重要なテーマとして捉えていて、女性疾患に関わる検査製品を数多く展開してきました。しかし、検査や治療が必要になってからでは、十分ではありません。女性が自分の身体を知るための啓発活動に取り組むことで、もっと早くから、もっと多くの女性に貢献できると思っています。20~30代の女性を対象に子宮頸がん検診を啓発するプロジェクトなども行っていますが、そうした経緯からだったと思います。
――知念さんが、ウィメンズヘルスの活動に参画することになった経緯を教えてください。
1年ほど前、社内でウィメンズヘルスを考えていくメンバーの募集があり、それに手を挙げたのがきっかけでした。当時はちょうど、私自身も産休から戻ってきたタイミングでしたので、女性にまつわる健康やキャリアの問題に、とても関心が強まっていた時期だったのです。社内で10人ほどが集まって、活動を始めていきました。
女性の社会進出が進むなかで、女性の健康は見過ごせない課題です。フェムテックなどの開発も盛り上がりを見せ、世の中にもずいぶん追い風が吹いてきました。これからは健康だけにとどまらず、それをサポートするための働きやすい環境づくりなどにも踏み込む必要があると思っています。女性に役立つさまざまな診断薬を持つロシュだからこそ、広い視野で課題をとらえ、解決に取り組んでいきたいと感じています。
――なかでも、とくにロシュらしい取り組みなどはありますか?
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査の啓発活動は、検査薬を扱っているロシュらしい取り組みだと思います。AMH検査とは、卵巣予備能を評価する血液検査のことです。女性の卵巣内に、卵子がどれくらい残っているかの目安がわかります。不妊治療を始めるタイミングなどに受ければ、治療法を選ぶための判断材料にすることも可能です。
――卵子の数が少なければ治療を急いだほうがいい、ということですか?
これは判断が難しくて、一概にそうとは言えません。卵子が多すぎても、排卵障害のように別の病気が隠れている可能性もあります。妊娠をするには卵子の数ばかりでなく卵子の質も大きく影響するため、あくまで参考ということになります。
ただ、すぐに妊娠・出産を望んでいない方でも、AMHの年代別平均値と照らし合わせて、いまの自分の状態を知っておくこともできるかと思います。「妊娠・出産はまだ考えていないけれどAMHの値がずいぶん低い……」という場合、パートナーが既にいる場合には、妊娠・出産のタイミングを早めてみたり、いない場合には例えば卵子凍結を検討してみたりするなど、さまざまな選択肢を考えることもできます。いずれにしろ、自分のライフプランを考えるひとつのきっかけなるのではないでしょうか。
――AMH検査は、どこで受けられますか?
まずは近くの婦人科で相談してみてください。近ごろは、婦人科のオプション検査で測定できる病院もあると聞いています。ちなみにロシュでも、今春から福利厚生のひとつになりました。社外にその必要性を啓発しているのだから、まずは社内から浸透させていこうということで、希望者が検査を受けられるようになりました。そうした企業が増えることも願っています。
――ウィメンズヘルスにまつわる活動を始めて、1年あまり。知念さんはいま、日本の女性が抱える課題について、どのように感じていますか?
社内のメンバーとディスカッションしたり、女性の意識調査をしたりするなかで、2つの課題が見えてきました。ひとつは、女性の「健康に関する知識」がまだまだ行き渡っていないこと。もうひとつは、女性たちの「自分に対する優先順位」の低さです。
たとえばAMH検査は、紹介すると必ず「こんな検査があるんですね。知らなかった」といった声が目立ちます。確かにちょっと特殊な検査なので、無理もないと思うかもしれません。しかし、子宮頸がん検診ですら行ったことがない、必要性をあまり理解していない方がたくさんいらっしゃるんです。多くの方の健康を守っていくために、私たちはもっと知識を届けていかなければなりません。
また、多くの女性たちは仕事や家事・育児に忙しく、自分に対する優先度がとても低いです。
つい「私は大丈夫」「いまは忙しいから」と、自分を後回しにしてしまうんです。その気持ちは、子育て中の私もとてもよくわかります……。
――その2つの課題を解決するには、どんな取り組みが必要でしょうか。
「自分の身体を知ろう」「検査に行こう」と働きかけ続けることは、まずひとつのきっかけづくりとして大切なことだと思っています。婦人科にかかる心理的ハードルを下げ、女性と病院のかけ橋のような存在になりたい。そうすれば、健康やキャリアを守るための検査を、適切なタイミングで受けてもらうことができます。
しかし、それだけでは足りません。女性が自分の身体を知り、健康を守ったうえで必要になるのは、結婚や妊娠、出産をしても充実して働き続けられる環境です。知識の啓発と働きやすい環境づくりは、ウィメンズヘルスを実現するために両輪で走らなければならないことだと感じています。
――充実して働き続ける職場づくりについて、社内では何かアクションを始めていますか?
いま検討しているのは、女性の働きやすさに関して社内でインタビューをし、改善を進めていくことです。病院の先生方とやりとりをしなければならない外勤の女性は、どうしても働き方に融通がきかず、仕事と出産・育児を両立しにくい現状があります。結婚や出産を機に内勤に移る女性も少なくありませんが、その選択肢だけでは根本的な解決になっていません。では、どうしていけばいいのか? そうした目の前の課題と向き合って、少しずつでも解決していくことが、私たちがウィメンズヘルスの活動を通じて目指す姿にもつながっていくと信じています。
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