ロシュのPeople and Culture(以下P&C)は、各アフィリエイトや地域の人事戦略を担うグローバル組織です。山浦さんは人財育成・組織開発チャプターに所属し、シンガポールオフィスからロシュ日本法人を含むアジア・パシフィック地域(APAC)の人財育成・組織開発を担当しています。P&Cでの役割や、海外に移住しながらロシュで働き続けることについて聞きました。
――山浦さんのいまのお仕事内容を簡単に教えてください。
最も大きな業務は、P&Cで展開している人財育成・組織開発のグローバルトレーニングを、担当国や地域の社員にフィットした形で届けることです。各国のカルチャーが異なるなかで共通言語を持たせるためには、コンテンツや表現をアレンジすることが必要になります。
たとえば、リーダーシップについて日本では「意思決定」や「集団を引っ張る決断力」といったイメージが強いもの。しかし、ロシュがグローバルトレーニングで伝えているリーダーシップはそうしたリード力や巻き込み力だけでなく、メンバーに合わせたコミュニケーションをしたり、困っていることを一緒に解決したりする寄り添いの力も多分に含みます。それをわかりやすく説明するにはどのような伝え方がよいのか、現場ではどう活かしてもらうべきかなどを考え、実践するのが私たちの仕事です。
そのほか、APACの担当としてグローバルトレーニングの改善や認知度向上を推進したり、日本のビジネスチームと連携しながら人財育成戦略を検討・調整したりしています。
――APACの組織に所属しながら日本の人財戦略に携わっているとは、ユニークですね。もともとそういう組織や配属だったのでしょうか。
もともとはロシュの日本オフィスの人事部にて、新卒採用や人財育成を担当していました。しかし、2021年に全社的な組織の変更があり、人事部は戦略的なグローバル組織である「P&C」へと再編成されました。これにより、私も日本に居ながらグローバルチームの一員となったのです。
組織のかたちが変わったことで、グローバルの方針が私たちに直接届くようになり、「人事の仕事を通じてグローバルからローカルチームを支える」といった意識が強くなりました。日本のビジネスチームが求める採用計画やトレーニングを進めるだけでなく、グローバルのP&Cの立場から日本のチームに必要だと思う中長期的な人財計画を立て、能動的に仕事を進める場面も増えたと思います。
組織自体も非常にフラットになり、階層組織ではなくなったのも大きな変化の一つです。やるべきことを指示してくれる上司がいなくなり、自分自身で仕事を開拓していかなければならなくなったため、はじめのうちは戸惑いもありました。しかし、自ら動いて自分もチームも成長していこうというグロースマインドセットに切り替わってからは、それまで以上に仕事が面白くなったと感じています。
――2023年からは、シンガポールへ移住・転籍をされています。もともと海外勤務にご興味があったそうですね。
はい。高校や大学で留学していたこともあり、グローバルな環境で働きたいという気持ちはずっとありました。海外に出て、多様なバックグラウンドの人たちとともに仕事をし、自分の力を試してみたかったのです。家族ともいずれ海外に移住しようという話はしてきたなか、夫のシンガポール転勤が決定。私自身もP&Cというグローバル組織に移り、働く場所が柔軟になったため、いまの仕事を続けながらシンガポールに移住する未来が描けました。
――移住にあたっては、どんなことが大変でしたか?
初めのうちはやはり銀行口座や娘の保育園の手続きなど、生活するためのインフラを整えるのが大変でしたね。同じ組織で同じ内容の仕事を続けるとはいっても、移住に際して日本のP&Cを退職し、シンガポールのP&Cに転職するという形だったので、その手続きもありました。でも反対に言えば、そうした事務手続き以外はさほど大変ではなく、とくにハードルはなかった印象です。
――おおもとの所属が同じであるとはいえ、日本にいて日本の人事業務をするより、シンガポールから日本の人事業務をするほうが、難しい部分が増えそうです。
リモートワークも浸透していたし、もともとグローバルのチームメンバーとオンラインで仕事をしていたため、ロケーションでの不都合はとくにありませんでした。ただ、日本の常識が通用しないカルチャーギャップはあったと思います。たとえば、シンガポールの会議では誰もが口を開き、思うことを自由に発言します。物静かで慎重な日本のコミュニケーションとは違い、すごくオープンでダイレクトなやりとりがあるのは、海外の面白いところです。でも、そんな場のなかで黙っているのは、何も考えていないのと同じこと。自分の価値を出すためには、積極的に発言する必要が出てくるのです。
トレーニングの一環でワークショップをするときも、日本ならみんな静かに話を聞いてくれてスムーズに進むけれど、シンガポールでは参加者からの発言がとても多い分、タイムマネジメントがぐっと難しくなります。もちろん、どちらがよくてどちらが悪いという話ではありません。P&Cの業務として私は、シンガポールでの会議や研修でうまく場を回すスキルを身につけたいし、日本のワークショップでもっと腹を割って話してもらえるような仕組みを考えたいと思っています。同じ仕事を国内と国外で経験することで、そうした発見があるのは楽しいですね。
――所属組織や働く拠点が変わったことで、ロシュという会社やご自身の仕事に対する考え方は変わりましたか?
良い意味で変わりません。入社時から「ロシュはチャンスにあふれた会社である」と聞いていたし、自分なりの知識や経験を身につければ、思い描くキャリアに近づける環境だと感じていました。それを信じて、入社してすぐは営業を、そのあとはずっと人事の仕事を頑張ってきましたし、結果として望んだ海外移住と現地での勤務を叶えることができています。
――山浦さんがいまのキャリアを実現できた理由は、どんなところにあると思いますか?
「いつか海外に出られるように」と、海外で人事業務をするための情報収集はずっと続けていました。社内の資料をインプットしたり、国外のチームとのプロジェクトに立候補したり、ロシュには働きながら掴めるさまざまなチャンスがあったと思います。
――移住を果たしたことで、どんな学びがありましたか?
公私ともに、人とのネットワークが広がりました。オンラインも発達しているけれど、やはり現地で顔を見ながらつくっていく人間関係には厚みがあると感じますね。4歳の娘もはじめの2ヶ月ほどは戸惑っていましたが、いまでは現地の学校に通い、英語で積極的にコミュニケーションを取りながら毎日を楽しんでいます。シンガポールはマレー系やインド系などさまざまな国籍の人たちが住んでいるので、娘は「みんな違ってみんないい」を肌で感じているようです。
――山浦さんご自身やP&Cが、いま力を入れて取り組んでいることはなんですか?
メンバーのリーダーシップを醸成するプロジェクトにはP&C全体で大きく力を注いでおり、さまざまなプログラムを作成しています。加えて、日本においてはDE&Iも見逃せない課題です。グローバルに比べるとどうしても浸透が遅れているため、さらなるトレーニングの重要性を感じています。先日は「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」に関する研修を通じて、無意識の偏見がどうして生まれるのか、職場でそれを改善するにはどうすればいいのかなどを考えました。日本では国籍や人種よりも性別に関する偏見がいまだ多いため、女性活躍の推進においては、採用面でもでき ることがまだまだありそうです。
人財育成や組織開発は、会社のなかの人的リソースを最大化する仕事。人や組織の成長に興味がある私には、とてもマッチした仕事だと思っています。ロシュにおいてもP&Cにおいても、よい仕事をするためには自分から動いていくことが欠かせません。ビジネスに貢献する視点を持ちながら、自分のアクションでロシュによい影響をもたらせるよう、能動的に働いていきたいと考えています。
――最後に、海外での勤務に関心を持っている仲間へアドバイスをお願いします。
自分が目指す理想と目標を明確に描いて、いまから動いてみてください。行動を起こすことで、キャリアは動いていきます。「キャリア」と聞くと、とても重くて大きい、動かすのが難しいもののように感じてしまうかもしれないけれど、実はそうではありません。自分が何をしたいのか、どうなりたいのかを考えて、自分を大切にしながら進んでいけば、自ずと道は拓けてくるものなのです。それを周りにしっかり伝えていけば、ロシュはきっとチャンスを与えてくれると思います。
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