乳がん患者さんに希望をもたらす、検査の発展とロシュの貢献

3月8日は国際女性デー。女性がいきいきと輝く人生を送るために、健康は大切な要素です。とくに乳がんや子宮頸がんといった女性特有の疾病は、早期発見によって治りやすいものも多く、検査がとても重要な役割を担っています。

がんの検査や治療は、日々進化を遂げています。たとえば乳がんでは、これまで予後が悪かったタイプに効く薬が生まれ、その薬を使うことができる患者さんを見つけるための検査が発展したことにより、多くの人が命を延ばせるようになりました。

今回登場するのは、マーケティング本部で乳がんなどの検査に関わる製品を担当している渡邊さんです。入社から一貫してウィメンズヘルス関連の製品に携わっている渡邊さんに、乳がん検査の現状やロシュの貢献、お仕事への想いを聞きました。

多くの乳がん患者さんを、適切な治療につなげていくために


――まずは、乳がんの治療や検査について現状を教えてください。

乳がん患者さんのがん細胞には、がん細胞の増殖に関係する「HER2(ハーツー)」というたんぱく質が見られることがあります。HER2が発現している(HER2陽性)乳がんは予後不良として恐れられていましたが、約20年前、このタイプに効く画期的な治療薬が登場しました。以降、検査でHER2陽性を確認できればその治療薬が投与できるようになり、該当する乳がん患者さんにとって大きな希望の光となったのです。

これは、がんのタイプに合わせて効果のある治療薬を投与するという、今でいう「個別化医療」の先駆けです。しかし、その薬を使えるのは一定量以上のHER2発現が見られるHER2陽性患者さんのみでした。つまり、HER2の発現量が少ない患者さんは、その薬を使うことができない、という課題が残っていたのです。

そんな中、2023年に革新的なことが起こりました。HER2の発現が微量でも投与できる薬が登場したのです。この治療薬が適応となる「HER2低発現乳がん」という新しいカテゴリも設定され、該当する患者さんの数は乳がん全体の50%にのぼりました。毎年95,000人も発症する乳がん罹患者の約半数に、延命という希望が与えられるようになったのです。

―そうした状況のなかで、渡邊さんはどのようなお仕事をしているのでしょうか?

乳がんや子宮がんの病理検査製品の、マーケティングを担当しています。ロシュで約20年、ウィメンズヘルス関連の分野に取り組んできました。現場で病気を診断する病理医の先生、患者さんと向き合い治療する臨床医の先生、お薬を提供する製薬会社と手を取り合い、患者さん一人ひとりに適切な診断がなされ、個々人に合った治療に結び付けられるよう手助けするのが仕事です。

乳がんや子宮がんなどの診断は基本的に、病理学的検査という検査が行われます。患者さんから怪しい部分の細胞・組織を採取し、薄くスライスしたものを病理医の先生が顕微鏡で見て診断するのです。ロシュが提供しているのは、そうして採取された細胞・組織に色を付ける試薬や機器です。染色することで、そこにある細胞が悪性なのか良性なのか、また、悪性の場合、どんな薬が効くタイプなのかを見極めていきます。

このたび登場した「HER2低発現乳がん」は「低発現」というだけあって、HER2がわずかでも認められれば、お薬の適用対象となります。ただしこの「わずか」は、専門の先生方にとっても見極めが難しいケースがあるのです。しかし、その難しい作業こそが薬を使えるかどうかを判断する重要なプロセスですから、ロシュでは適切な診断をサポートするための活動を行っています。

また、これまでの保険制度では一人一回しかHER2検査を受けることができなかったのですが、2023年5月から、過去にHER2検査を受けたことがある人も、再検査を受けられるようになりました。HER2低発現乳がんの登場により、再検査を通じて、お薬を投与できる可能性のある患者さんが出てきたためです。現場の先生方と協力しながらこうした保険制度にアプローチし、ベストな仕組みを整えていくのも、仕事の一つといえます。


――乳がんの検査という分野で、ロシュだからこそできる貢献は何だと思いますか?

ロシュは検査・診断の補助となるマーカーを現在200種類以上扱っており、提供できる引き出しを多く持っていると思います。そして、開発元では、毎年多くの製薬会社と協力して研究開発を行い、新たなマーカーの発見、製品化へと取り組んでいます。乳がんの専門知識を持った先生方や世界各国との連携が深いのも、ロシュの強みだといえるでしょう。

最近では、全国の病理医の先生方にHER2診断の調査を行いました。第一人者とよばれる先生方の間でも判断が分かれてしまうような難しい症例についても、染色した診断用の組織画像を紹介しながら、適切な判定をお伝えします。人の目で診断している以上、どうしても正確さに限界は出てしまうものだと思います。しかし、たとえばそこにデジタルツールを取り入れるなどして、将来的には誰が見ても同じ判断ができ、患者さんがどの病院を受診しても、一貫した検査結果をもって、適切な医療にたどり着ける世の中をつくりたいと思っています。

自分の仕事が、少しでも世の中の人に役に立てたら


――渡邊さんは「がん」に関わるいまのお仕事に対して、どのような想いを持っていらっしゃいますか?

日本人の2人に1人はがんに罹患するといわれていますが、私の親族にも罹患者が多く、がんで身近な人が亡くなっていく姿を幼いころから見ていました。また両親も共にがんサバイバーであることから、つねに私にとってがんは身近な病でした。がんにまつわる仕事をして、世の中に貢献したいなと思うようになったのは、自然の流れだったように思います。とくに子宮頸がんや乳がんは30~40代の働きざかりに発症するがんで、世の中には小さな子どもを残して亡くなる患者さんも少なくありません。一方で、検診をしっかり受けて早期に見つけ、治療が開始できれば、助かる可能性も非常に高い疾患だといえます。

いま私が携わっているのはまさに、がんのタイプを的確に診断して、どの薬が効くかどうかを見極め、適切な治療に結びつけるために大切な仕事です。自分のおこなっていることが、さまざまな患者さんの役に立つものでありたいと日々願いながら、力を尽くしています。

――仕事をしていて、とくに社会への貢献や喜びを感じられるのはどんな瞬間でしょうか。

患者さんから直接お声をいただくような機会はなかなかありませんが、ニュースで取り上げられていたり、私の仕事がきっかけとなり、身近な人から「今度検診に行くことにしたよ、ちゃんと検査してもらうようにするね」などと言われたりするだけでもうれしいですね。また、小学生の娘に「お母さんはどんな仕事をしているの?」と聞かれ、「がんの検査のお仕事をしているんだよ」と説明したら、娘が「じゃあ私は、がんをお薬で治す人になりたい」と言ってくれたときもうれしかったです。

仕事の一つひとつが、患者さんの延命につながったり、誰かが自分の仕事の役割を考えたりするきっかけになるかもしれないと思うと、日常の中のふとしたひとコマに喜びを感じますね。


――最後に、今後の目標やお仕事の展望についてお聞かせください。

検査薬のマーケティングは、何かひとつ施策を打ったからといって劇的に変化するものではなく、一つひとつの積み重ねが大切な仕事です。検診の啓発活動をしたからといってすぐに受診率が上がるわけではないですし、病理診断の情報を提供したとしてもかならずしもすぐに浸透するとはいえません。だからこそ、地道に一歩ずつ歩みを進めていくことが、私のやるべきことだと考えています。

私のキャリアは、細胞検査士として子宮頸がんの細胞診の検査・研究に携わるところからはじまりました。ロシュに入社し、子宮頸がんや乳がんのマーケティングを担うようになって、いまではウィメンズヘルスこそが自分のライフワークだと感じています。これからも、ただ製品を使っていただくだけでなく、どうしたらこの製品が最大限の価値を生み出せるかを考え、現場やその先にいる患者さんと向き合っていきたいです。それから家族のために、自分自身の健康も大切にしたいですね。

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