ロシュとウィメンズヘルス|HPV検査の普及に力を尽くす。子宮頸がんの患者さんを減らすために

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが原因で引き起こされる疾患です。日本では、年間約10,800人が罹患し*1、約2,900人の女性が亡くなっています*2。

早期に発見できれば確実に治療できることがわかっているにも関わらず、日本の検診受診率は諸外国と比べ低く、約4割(43.7%)*3しかありません。

  1. 国立がん研究センターがん情報サービス「全国がん罹患データ(2016年~2019年)」 2019年のデータ参照

  2. 国立がん研究センターがん情報サービス「全国がん死亡データ(1958年~2021年)」2021年のデータ参照

  3. 国立がん研究センターがん情報サービス「国民生活基礎調査による都道府県別がん検診受診率データ」2019年のデータ参照

そんな状況を改善すべく、ロシュではとくに、HPV検査による子宮頸がん検診の普及に力を入れています。今回はHPV検査の内容や普及の取り組みについて、マーケティング本部マーケティンググループの森下さんに聞きました。

将来の子宮頸がんリスクまで調べられる「HPV検査」

子宮頸がん検査には「細胞診」と「HPV検査」があります。現在多くの病院で主流なのは、子宮頸部から細胞を採取して、その形状に異常がないかをチェックする細胞診です。専門職である細胞検査士が、細胞を顕微鏡で確認し、がんに進行する可能性のある「異形成」と呼ばれる状態かを判断します。対して、ロシュがとくに普及を進めているのはHPV検査です。

「HPVは、子宮頸がんの原因となる『ヒト パピローマ ウイルス(Human papilloma virus)』の頭文字です。子宮頸がんは基本的に、このウイルスの持続感染によって発症します。このウイルスに感染しているか否かを調べられるのが、HPV検査です。細胞診が細胞の状態を確認するのに対し、HPV検査は、目に見えないウイルス感染の有無を調べます。また、実はHPVには何百種類も型があるのですが、そのうち、将来子宮頸がんに移行するリスクの高い、ハイリスク型HPVに感染しているかどうかも調べることができます。PCR法など遺伝子レベルで感染の有無を高感度に調べるため、見落としが少ないというメリットもあります。」(森下さん)

「検診でHPV検査を積極的に実施している医療機関はまだまだ少ないですが、子宮頸がんのリスクが調べられるのは、がん予防の観点では大きな利点です。現状の指針に含まれていないからこそ、HPV検査の重要性を強く訴求して、理解していただかねばならないのです」と、森下さんは語ります。

HPV検査を普及させ、その市場を広げていくために、森下さんは日々多くのステークホルダーに働きかけています。

「産婦人科の先生方や検診施設、自治体のがん検診を担当している保健師さんなど、がん検診にはさまざまなステークホルダーがいらっしゃいます。そうした方々にHPV検査の必要性やメリットをお伝えして、現場に取り入れていただくのが私の仕事です。国会議員や市議会議員の方々にお話をすることで、議会でHPV検査が取り上げられ、自治体での導入が加速することもあります。さまざまな立ち位置の方を巻き込み、多方向から声を上げてもらうことが、検査の普及にはとても大切なのです」(森下さん)

アプローチをする方に合わせて、訴求の方法も変わります。たとえば、産婦人科の先生方には検査の重要性を伝えつつ、検査の方法やデータの解釈といった現場の動きについても詳しく伝えます。

行政に対しては、HPV検査を取り入れた場合の子宮頸がん罹患率や削減できる医療費などを、事細かにシミュレーションすることも少なくありません。HPV検査でHPVに感染していないことがわかれば、次の検診受診は5年後でよくなるため*4、隔年だった検診の回数や費用負担も減らせます。

*4:国立がん研究センター「有効性評価に基づく子宮頸がんガイドライン」

2019年には、自治体をあげて子宮頸がん撲滅に取り組む佐賀県とロシュで、「女性をがんから守る連携協定」を締結しました。佐賀県はもともと子宮頸がん発生率や死亡率が高く、全国ではじめて都道府県レベルでHPV検査の全面無料化を決めた自治体です。

「佐賀県や婦人科の先生方と一緒に、県内の女性たちに子宮頸がんを“自分ごと”化してもらう施策を一生懸命に考えました。子宮頸がんの罹患が多いのは、30~40歳代の女性です。子育てや仕事にお忙しい年代で、まさか自分がなるとは思っていらっしゃらない方も多く、つい検診への足が遠のきがちなのです。そのため、佐賀県出身で同年代の女優さんに広報大使をしていただき、『ほっとかないで、ほっとしよう』というキャッチフレーズで検査の受診を呼びかけました。取り組みの甲斐あって、他の県に比べると少しずつ検診の受診率は上がっています」(森下さん)

検診の啓発活動で終わるのではなく、検診に足を運んでもらうという行動に繋げるのが大切だと森下さんは語ります。

「まずはさまざまな取り組みを通じて検診の重要性を伝え、次に『自分も罹患するかもしれない』と意識を変えてもらうことを目標としています。それから、実際に検診を受けてもらう“行動の変容”までを、なんとかサポートしていきたいです。受診率を上げるには、啓発活動をし、「面倒くさい」、「よく分からない」といった障害を取り去り、受診のきっかけ作ることが重要だと考えています。」(森下さん)

多方向にアプローチしているとはいえ、HPV検査を導入していただくまでの道のりは平たんなものばかりではありません。

「HPV検査を普及する最大の目的は、子宮頸がんの患者さんを減らすことです。ロシュの検査薬を使っていただきたい気持ちはもちろんありますが、メーカーの枠を超えてHPV検査の有用性をアプローチする必要があるとも感じています。だからこそ、直接ロシュの検査薬を使う医療関係者だけでなく、検診に携わるさまざまなステークホルダーの方にアプローチをするようにしているのです。」と、森下さんはその意気込みを語ります。

「私たち検査薬メーカーも、医師の先生方も、さまざまなステークホルダーの方々も、患者さんの数を減らすという共通のゴールに向かう“ひとつのチーム”だと認識しています。だからこそ『我々の試薬をどうか使ってください』ではなく『よりよい検査のために、ベストな試薬や仕組みを作って普及していきます』という姿勢を大切にしていきたいです。もちろん、新しい検査の市場をゼロからつくることには、時間も労力もかかります。しかし、実際に検査を受けていただき、早い段階で子宮頸がんを見つけられた患者さんのお話を聞くと、本当に仕事のやりがいを感じます」(森下さん)

「まずはこれからも、HPV検査を知ってもらい、これまで受診していなかった人たちに足を運んでいただけるように、地道な普及の取り組みを続けていきます。そして市場が出来上がってきたときには、やはりトップシェアを目指していきたいと思っています。ロシュには、いまほどウィメンズヘルスにスポットライトが当たっていない時期から、女性特有のがんや不妊治療、更年期障害といった分野で開発・推進を積み重ねてきた歴史があります。女性が人生において『こんなことがしたい』と感じたとき、疾患によってその道が阻まれることのないように、さまざまな分野の試薬で支えていきたいと考えています」(森下さん)

子宮頸がんについて詳しく知りたい方は

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