PCRの歴史


DNA構造の発見~PCR技術考案前 |
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1953年 |
ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリックの二人の研究者によって、DNAの二重らせん構造が発見されました。ここから遺伝子に関する研究が飛躍的に進歩していきます。1) ![]()
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1956年 |
アーサー・コーンバーグがDNA合成酵素の単離に成功。 DNAを人工的に合成することができるようになりました。2) |
1969年 |
トマス・ブロックがイエローストーン国立公園の熱泉から好熱性細菌Thermus Aquaticus(サーマスアクアティカス)を発見しました。 今日のPCRにはなくてはならない耐熱性DNA合成酵素は、のちにこの細菌より単離されます。3) ![]() |
1977年 |
フレデリック・サンガーがDNAの配列解析法を発明しました。 この方法はサンガー法と言われ、DNA合成酵素、プライマー、ヌクレオチドなどが使われており、PCR発明の土壌となっています。4) |
PCR技術考案、発展 |
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1983年 |
キャリー・マリスがDNAポリメラーゼを用いた連鎖的に増幅する核酸合成法を発明し、PCR (polymerase chain reaction)と名付けました。当時マリス博士がシータス社で研究していたオリゴDNAに関する知見から、鋳型となるDNA配列を2倍、4倍…と増やすことができるアイディアを考案しました。 ![]() |
1985年 |
マリス博士の所属するシータス社の研究チームがPCR法を応用した鎌状赤血球の迅速診断法の論文をサイエンスで発表し、マリス博士のアイディアが正しかったことが実証されました。 |
1986年 |
Thermus aquaticusから単離されたDNA合成酵素(Taqポリメラーゼ)により、PCRは酵素を継ぎ足すことなく何十サイクルも連続して反応できるようになり、今日のPCRの原型が出来上がりました。 このTaqポリメラーゼ以前は、急速な加熱と冷却に耐えることができない酵素である大腸菌からのDNAポリメラーゼが使用されていました。大腸菌を使用した場合、ポリメラーゼは熱で失活するので、サイクルごとにポリメラーゼを添加しなおす作業が人手で行われていました。 |
1991年 |
ロシュ社がシータス社よりPCRの全事業権を取得し、医療への応用をさらに発展させていきました。 詳細は ロシュ・ダイアグノスティックスの歴史へ |
1993年 |
キャリー・マリス博士がPCRの発明によりノーベル賞を受賞しました。 ![]() |
1996年 |
世界初のPCR用自動分析装置が登場 ![]() |
2001年 |
PCR技術を応用したDNA配列解析技術の進歩によりヒトゲノムの全配列が解明されました。 |
今日 |
PCRは様々な形で現在も発展を続けており、「活用例」にもあるように、医療だけでなく、献血、法医学、農業、工業など様々な分野で広く使われています。 |




参考文献:
1)Watson, J.D.; Crick, F.H. (1953). "A structure for deoxyribose nucleic acids". Nature. 171 (4356)
2)Lehman IR, Kornberg A, et.al., (1958). "Enzymatic synthesis of deoxyribonucleic acid. I. Preparation of substrates and partial purification of an enzyme from Escherichia coli". The Journal of Biological Chemistry. 233 (1): 163–70.
3)Brock TD; Freeze H (1969). "Thermus aquaticus, a Nonsporulating Extreme Thermophile". J. Bacteriol. 98 (1): 289–97.
4)F. Sanger, S. Nicklen, and A. R. Coulson (1977). “DNA Sequencing with Chain-Terminating Inhibitors”. Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 74 (12): 5463-5467.