スッと背筋の伸びた美しい姿勢から、身体をしなやかに操り、難しいポーズを軽々と決める村上さん。都内でヨガスタジオを経営し、多くの会員を指導するベテランのヨガインストラクターです。村上さんが悪性リンパ腫の確定診断を受けたのは2014年のこと。無事に病気を乗り越え、健やかな暮らしを取り戻した今、当時のことを振り返ります。

image - 村上真理子さん

驚きの検査結果と、突然の入院。

病院で血液検査、生検組織の病理検査、尿検査、CT検査、内視鏡検査などさまざまな検査を受けた村上さんに、確定診断が出ました。結果は肺の悪性リンパ腫。悪性リンパ腫は造血器のがんの一種で、村上さんのがんの進行はすでにほぼステージⅣに達していました。検査で撮った画像を見ると、肺の中にグレープフルーツほどもある大きな腫瘍の影が広がっていたそうです。「大きくなった腫瘍が気道を塞ぎ、片方の肺がほぼ機能しない状態になっていると言われました。その頃は、呼吸をして肺が広がるたびに、その場でうずくまってしまいそうなほど、激しい痛みを感じていました」。医師に1ヶ月以内に入院しなければあと3ヶ月持たないと告げられ、村上さんは突然の入院を余儀なくされます。「自分はどうなってしまうのか、仕事は続けられるのか、家族への負担は、と不安でいっぱいになりました」。

 

がんのタイプを調べる検査の結果をもとに、治療プログラムが決定。

近年がん領域では、遺伝子やたんぱくなどの分子の違いにより患者さんのタイプを分けて、最適な治療法を選択する「個別化医療」が行われています。村上さんにも、特定の治療薬の効果が期待できるかどうかを調べる検査が行われ、村上さんのがんのタイプとそれに対応する治療薬が判明しました。この治療薬は病気の原因となっているタンパク質などの特定の分子に作用するように設計されています。従来の抗がん剤は、がん細胞の活発な増殖を抑える作用を持ついっぽう、正常な細胞の増殖も抑えてしまうため、吐き気や皮膚のしびれといった副作用が出やすくなるなどの難点があります。そこで村上さんには、村上さんのがんのタイプに適した治療薬と従来の抗がん剤を組み合わせ、副作用による体への負担を抑えながら根本治療をめざすプログラムが組まれました。

 

信頼できる医療スタッフの存在が心の支えに。

村上さんにとって救いになったのは、主治医をはじめとする担当の医療スタッフが、親身になって治療を支えてくれたことでした。「主治医の先生はとても熱意があり、知識や経験も豊富な方でした。『検査であなたの病気のタイプも、効果のある薬もわかっているから、がんばってこのプログラムを進めれば、きっと治りますよ』と言ってくださったので、その言葉を信じて前向きに治療に取り組むことができました」と村上さん。その先生は治療方針を決める前に、起こりうる副作用やその理由についても、包み隠さずしっかりと話してくれたので、身体がつらくても大きな不安を感じることはなかったそうです。そして、「担当の看護師さんたちにも恵まれました。たとえば初めて抗がん剤を処方されるときも、柔らかい雰囲気をつくりながら、すばやく丁寧に点滴針を打ってくれて、私がなるべく安心していられるよう気遣ってくださいました。検査技師の方も、ペットCTの検査で造影剤を注入するときなど、私が不安を感じる間もなく、サッと進めてくださいました。いつも患者の気持ちに配慮したご対応をしていただき、心から感謝しています」と語ります。

検査は、自分の身体や心と向き合うきっかけになる。

とはいえ、やはり入院中は痛みや副作用の影響で、精神的に落ち込むこともあったという村上さん。心の健康を保とうと、病室でもできる範囲でヨガのトレーニングをし、布団の上げ下げも自分で行うなど、なるべく体を動かすように努めていたそうです。また、「入院して自分を見つめ直す時間が持てたことで、前からうっすらと考えていたヨガスタジオ設立の目標が明確になり、治療をがんばる励みになりました」と話します。そうした心がけもあってか、村上さんは深刻なうつ状態に陥ったり、大きな副作用や後遺症が残ったりすることもなく、病気に打ち勝つことができました。

image - 村上真理子さん

この記事を読む人にどんなメッセージを伝えたいかをたずねると、答えてくれたのは検査の大切さについてでした。「検査を受けることは、病気の予防や早期発見につながります。そして、もし検査の結果が思わしくなく、入院などをすることになっても、その間に自分の身体や心としっかり向きあえば、私のように、未来につながるきっかけが見つかることもあると思います。ぜひ勇気を出して検査を受け、これからも人生を謳歌してください」。インタビューの間も、終始こちらを気遣いながら、おだやかにわかりやすく話をしてくださった村上さん。その目には、大変な経験を乗り越えたからこそと感じさせる、強さと優しさが宿っていました。

 


 

私の「受けてよかった」 〜病気を乗り越えた方へのインタビュー〜

村上真理子さん

ヨガインストラクター。退院後まもなく、都内に「ヨガ&セラピー スタジオ マリーチ」を設立。多くの会員を指導しながら、後輩インストラクターの育成にも努めている。